樹木葬のメリット・デメリットや注意点を解説
2024.06.01
近年注目を集めている樹木葬。従来のお墓とは異なり、遺骨を樹木の下に埋葬する新しい供養の形です。美しいシンボルツリーを墓標の代わりにする埋葬形式とも言えるでしょう。
樹木葬は、自然に還ることができ、費用も比較的リーズナブルなため、昨今人気が高まっていますが、購入を検討する際、メリットとデメリットどちらも把握しておくことが大切になります。この記事では、樹木葬を検討している方のために、樹木葬のメリットとデメリットや樹木葬を選ぶ際の注意点を詳しく解説します。
樹木葬とは?
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を植えて、その根元に遺骨を埋葬する永代供養の方法です。植える植物は美しいバラや桜、お釈迦様にちなんだ菩提樹などお墓によってさまざまです。特に樹木はなく、美しい緑の芝生に埋葬するような樹木葬もあります。
樹木葬の種類は埋葬方法によって大きく2つに区分できます。従来のお墓のように専用の区画がある個別墓、広い墓地の中で、ほかの方と一緒に埋葬される合祀墓です。墓苑によっては、ペットと一緒に眠れる区画が設けられている場合もあります。
年月が経つにつれて、土に還っていくお墓のため、近年、自然回帰や継承者不足などの問題から、墓石を管理する必要がなく、自然に還れるという点から、注目されています。
それでは次に、樹木葬のメリットとデメリット、注意点について詳しく説明していきます。
樹木葬のメリット
樹木葬のメリットとしては、
- 費用が抑えられる
- 承継者が不要
- 宗教や宗派に縛られない
- 自然に還れる
①費用が抑えられる
新しくお墓を購入する場合、一般墓だと墓石や土地の購入に百万円程度かかり、年間管理費も必要になります。それに比べて樹木葬は、墓石や土地代がかからないため、従来のお墓に比べて費用を抑えることができます。樹木葬の費用相場は20万円から70万円ほどが目安で、後々の管理費などもないケースもあります。
②承継者が不要
近年では、核家族化が進んでいるので、承継者がいない人も増えています。樹木葬は、遺族が代々受け継いでいく必要がなく、後々の供養の負担を軽減できる場合が多いため、ご夫婦や個人単位でお墓に入る方も少なくありません。
個別墓の場合は、10年、33年、50年といった個別供養期間が設定されていることがありますが、期間が満了するとご遺骨を合祀墓に移す墓苑もあります。承継者が不在でも、毎年合同供養会を執り行ってくれる墓苑もあります。
③宗教や宗派に縛られない
樹木葬は、仏教・神道といった宗教や宗派に関係なく申し込みできることがほとんどです。お寺の檀家さんになる必要もなく、どのような方でも安心して利用できるのは大きなメリットのひとつと言えるでしょう。
ただし、住職との面談や戒名付け、納骨法要を求められる場合や、読経や祝詞をあげるタイミングがかぶらないように、法事の日時を寺務所まで連絡しなければならない墓苑もあります。
④自然に還ることができる
樹木葬は、自然に還ることができる自然葬なので、遺骨が土に還ると樹木の栄養となるため、環境への負荷が少ない供養方法です。なかには、木元にカロート(石室)を設置して、骨壷をそのまま収める墓苑もあり、この場合は改葬や合祀がしやすいといったメリットが挙げられます。
樹木葬のデメリット
樹木葬のデメリットとしては、
- 遺骨を取り出せないことがある
- 場所によってはアクセスが悪い
- 遺族とトラブルになる可能性がある
- 災害の影響を受けやすい
- 埋葬する人数が限られている
①遺骨を取り出せない(返骨できない)ことがある
一度埋葬すると、遺骨を取り出せないケースがあります。特に、合祀埋葬の場合は、返骨ができなくなるためご注意ください。 個別に納骨したい場合は、費用が高めの個別埋葬を選ぶ必要があります。改葬予定がある方も、個別埋葬を選ぶと良いでしょう。
②場所によってはアクセスが悪い
樹木葬墓地は、山間部にある場合もあり、アクセスが悪い場合があります。 最寄りの駅から遠く、自家用車でお参りすることが多いため、高齢者や体の不自由な方にとっては、参拝が困難になることも。
さらには、真冬の時期は墓苑が雪で閉ざされたり、悪天候の場合は、雨水が溜まり足元が悪い場合があります。真夏は休憩できる日陰があるか、水場やトイレの有無などもチェックすると良いでしょう。
③遺族の意識が統一されていない場合、トラブルになる可能性がある
樹木葬は、家族全員の同意が必要です。遺族の意識が統一されていない場合、トラブルに繋がる可能性があるからです。遠方の実家の一般墓を、承継者の自宅近くの樹木葬に改葬する場合も、親族の了承を得るようにしてください。
樹木葬は自然に還りやすくするために、ご遺骨を粉骨してパウダー状にする場合があります。そのため、親族へ粉骨に対して抵抗があるかどうか、しっかり確認するようにしてください。
④災害の影響を受けやすい
野外の樹木葬は、災害の影響を受けやすいリスクがあります。地震や台風時に樹木が倒壊したり、土砂災害の際には、ご遺骨が流失するといったケースが挙げられます。
さらには、シンボルツリーが病気で枯れたり、落ち葉が多く雑草も生い茂ってしまい、お墓が荒れ果てた雰囲気になる場合もあります。火事防止や鳥害予防のために、持参した線香やお供物をお供えできない場合もあるため、詳しくは墓苑までご確認ください。
⑤埋葬する人数が限られている
樹木葬は、区画のスペースが限られているため、埋葬する人数が限られている場合があります。樹木葬の購入後に、遺族や子孫の方が想定外にお墓に入れないことがないように、契約書の細部までチェックするようにしてください。
樹木葬を選ぶ際の注意点
ここからは樹木葬を選ぶ際の注意点を5つご説明していきます。
①希望する樹木葬の種類
合祀埋葬、個別埋葬、里山型、公園型など、希望する樹木葬の種類を決めましょう。合祀埋葬は、樹木の木元に複数の方と一緒に埋葬されるタイプであり、個別埋葬は、区画ごと・家族ごとに個別に埋葬されるタイプです。そのほか、ふるさとを感じる自然の山などに埋葬する里山型や、草花や樹木がきれいに植えられた公園型の樹木葬が挙げられます。
②費用
費用は、樹木葬の種類や場所によって異なります。墓苑によっても費用や埋葬形式が異なるため、資料や見積もりをもとに比較検討を行うようにしてください。ポータルサイトなども活用すると良いでしょう。
③アクセス
墓地までのアクセスは、参拝の頻度を左右します。自家用車がない場合は、公共交通機関の利用ルートや墓苑の送迎バスの有無を確認するようにしてください。 樹木葬を検討するエリアは、遠方の実家の近くか、ご自宅の近くか、職場の近くかなど広域のエリアでご検討ください。
④管理体制
検討中の樹木葬の管理体制がしっかりしているかご確認ください。定期的な草むしりや剪定が行われているか、樹木の状態は良好か、病気に強い樹木の種類か、といったことをチェックすると良いでしょう。通常時にお参りして、普段の管理状況を確認するのもおすすめです。
⑤遺族の意識
樹木葬は、家族全員の同意が必要になります。事前に、本人や家族、親族の意思をご確認ください。故人の遺志と、ご遺族のご希望に寄り添った樹木葬選びをするようにしてください。
樹木葬の購入を後悔しないために
今回は、樹木葬のメリット・デメリットや注意点について解説しました。樹木葬は費用も抑えることができるとともに、自然葬の形式も注目され、増加傾向にあります。とはいえ、まだ抵抗感を感じる方も一定数いらっしゃるでしょう。
トラブルを未然に避けるためにも、遺族や親族がしっかり話し合い、樹木葬のメリット・デメリットなどを理解することをおすすめします。また、一度見学に行くことで墓苑やスタッフの雰囲気や設備を直接チェックしてみるのも良いでしょう。